自分のための一杯を探して。安野希世乃、日本酒と歩む時間 ── 超吟醸祭SPインタビュー presented by 鋼の肝臓KReTA No.7

2025/8/21

「日本酒は、自分が一番おいしいと思えるやり方で飲めばいい」
そう語る声優・安野希世乃の言葉には、経験からくる確信と、酒への敬意がにじむ。

宮城県出身の彼女は、ふるさとの涌谷町と同県の平孝酒造とともに「稀世」という銘柄をつくってきた。

仕事、酒、人との縁──そのすべてが、彼女の人生の中でゆるやかに、しかし確かにつながってきた。


人と飲む時間が好き

──普段、日本酒はどんなシーンで楽しみますか?


「家で飲むより、誰かと外で飲むことが多いですね。声優仲間や友達と“日本酒会”をやったり、銘柄を持ち寄って飲み比べしたり」

その場に並ぶのは、華やかな吟醸酒から地元の銘柄までさまざま。誰かが「これ、今日持ってきたんだ」と差し出せば、自然とグラスが回り、味や香りの感想が飛び交う。

「同じお酒でも人によって感じ方が違うのが面白いんです。甘く感じる人もいれば、辛口だって言う人もいて」

酒は、彼女にとって人と時間を共有するためのきっかけだ。
同じテーブルでグラスを傾ける夜は、作品づくりとはまた違う距離感を生み、肩書きや役を超えて素の自分に戻れる安らぎがある。気づけば話題はお酒から人生のことまで広がり、その一晩が忘れられない記憶になる。


氷を入れる自由

──飲み方のこだわりはありますか?

価値観が変わったのは、秩父の武甲酒造を訪れたとき。13代目蔵元の長谷川 浩一氏から「どんなふうに飲んでもいいんだよ」と声をかけられた瞬間だった。

「作り手への敬意はもちろんあります。でも、日常で楽しむなら、自分の体に合う形でカスタマイズしてもいい──そう思えるようになったきっかけでした」

それまでは氷を入れることに少し後ろめたさがあった。しかし“好きに飲んでいい”という一言が、その固定観念を解きほぐす。氷で香りをやわらげ、温度を保ちながらゆっくり飲む──そんな彼女なりのスタイルが、そこから生まれた。


日本酒との出会いと「三つの衝撃」

──日本酒にハマったきっかけは?

「20代半ばまで、日本酒は強いお酒で自分には合わないと思い込んでいました。でも初詣で飲んだ一ノ蔵(宮城県・一ノ蔵)の甘酒で、お米の旨みに感動して」

その一杯が扉を開けた。やがて出会ったのがNo.6(秋田県・新政酒造)。偶然にも声優デビュー年に関わった作品と同じ名を持つ銘柄で、華やかな香りとスパークリングのような軽やかさに驚かされた。

「これが同じ“日本酒”なのかって思いました」

そして三つ目の衝撃は花陽浴(はなあび)(埼玉県・南陽醸造)。

「南国フルーツのようなジューシーさ。米と水と酵母だけで、こんな味になるのかって驚きました」

一ノ蔵の素材本来の味わい、No.6の透明感、花陽浴の果実感──まったく異なる個性を持つ3つの出会いが、彼女を一気に日本酒の深い世界へと引き込んでいった。


“日本酒ファースト”の食卓哲学

──日本酒に合う料理は?

「塩とスダチをかけた白身魚のお刺身、フルーツや野菜の自然な甘みや苦みが好きですね」

安野さんは“日本酒ファースト”という考えを持つ、という。

「料理のために酒があるのではなく、酒のために料理を合わせてもいい。少量を最高の状態で味わいたいから、一度に飲むのは3種類までと決めています」

柑橘の酸味は酒の香りを引き立て、熟した果物の甘みは吟醸香と調和する。野菜のほろ苦さは旨みを際立たせ、口中をすっきりと整えてくれる。

彼女にとって食卓は、酒が主役の舞台。料理は酒を引き立てる存在であり、その調和が一杯をより特別なものにする。

単なるペアリングを超え、日本酒がもっとも輝く瞬間を演出するのが、安野希世乃の流儀だ。


酒がつなぐ人の輪

日本酒は、人との距離を不思議と縮める力を持っている。
アニメ作品の打ち上げで、安野さんは仲間を日本酒の店へ誘った。そこから自然に会話が生まれ、今も続く“日本酒仲間”ができたという。茅野愛衣、東山奈央といった同業者とも、酒の席を通じて親交を深めてきた。

「おすすめを共有し合える関係は、本当にうれしいです」

仕事の話だけでなく、互いの近況や趣味、次に行きたいお店の話──話題は尽きない。
SNSでも銘柄や感想を発信し、ファンからおすすめをもらうことも増えた。

 こうした交流は、彼女が日本酒を愛し、その魅力を発信し続けてきたからこそ生まれたご縁だ。日本酒はただの飲み物ではなく、彼女にとって人と人を結ぶ架け橋でもある。


日本酒を量よりも、深く楽しむ

「お酒が強くなくても、日本酒は楽しめます。少量からでも味わえるお店は増えていますし、自分の体に合った飲み方を見つければ怖くない」

安野さんが一度に飲む量は1合から1.5合ほど。無理せず、自分のペースで飲むからこそ、一杯ごとの香りや味わいを丁寧に記憶できる。

「この子は香りは華やかだけど後味はすっきりしてるな、とか。少量だと集中して味を感じられるんです」

たくさん飲むことよりも、じっくり味わうことを大切に──そのスタンスが、彼女の日本酒の楽しみ方を磨いてきた。
飲み方に正解はない。ただ、自分に合った一杯と出会い、その瞬間を大切にする。そんな姿勢が、日本酒との距離を自然に近づけてくれる。


これから出会いたい一杯

「限定酒や地元でしか飲めないお酒に出会ってみたい。そのために旅にも出たいですね」

彼女が思い描く“日本酒の旅”は、まだ始まったばかり。その第一歩となるのが、今年10月に池袋で開かれる超吟醸祭だ。

「蔵元さんやお客さんと直接お話できる機会は貴重ですし、その場でしか飲めないお酒に出会えるのが楽しみです!」

会場には全国から選りすぐりの蔵元が集まり、150種類以上の吟醸酒が揃う。普段は遠くて足を運べない地域の酒や、イベント限定の特別な一杯に巡り会えるのも魅力だ。

安野希世乃の日本酒の旅は、この日をきっかけに新たなステージへと進む。そこから生まれる出会いが、また新しい土地や人、そして物語を連れてくるだろう。


イベント情報

・イベント名:超吟醸祭 powered by SIPORY

・開催日:2025年10月18日(土)・19日(日)

・会場:中池袋公園(東京都豊島区)

・安野希世乃さん出演回:10月19日(日)第6部(17:00~19:00)


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(取材・写真:渡辺 和希 文:蒼井 しぽり)

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