声優・牧野由依が語る「私と日本酒と、家族と音楽」── 超吟醸祭SPインタビュー presented by 鋼の肝臓KReTA No.2
2025/8/5

声優、歌手、そしてピアニストとして幅広く活躍する牧野由依さん。穏やかな語り口の中に、日本酒との深いつながりや家族との豊かな時間、そして音楽と日本酒が交わる瞬間への思いがにじむインタビューとなりました。
“無茶はしないけど、なかなか酔いません”──自分のペースで、ゆっくり楽しむ
——お酒は、強いほうなんですか?
「検査してみたら、アルコール分解酵素の活性が“下から2番目”だったんです。つまり、体質的には弱いらしいんですけど……実際はそんなに酔わないんですよ。最初の1時間半くらいは顔が真っ赤になるんだけど、2時間くらい経つとスッと赤みが消えて、“無双モード”に入る(笑)」
自分の体質を客観的に知ったことで、よりお酒との向き合い方が自然になったという牧野さん。
無理せず、自分のペースで、ゆっくりと楽しむ——そんな飲み方にぴったりなのが、日本酒とウイスキーだった。
「どちらも、食事と一緒にじんわり味わえるから好きなんです。ワインはちょっと酔いやすくて苦手なんですけど、日本酒やウイスキーは、食卓の流れに溶け込んでくれる感じがして」
静かに、おだやかに、でも確かに。お酒と仲良くなるには、体質よりも“付き合い方”のほうが大事なのかもしれない。
冷蔵庫の8割が日本酒——牧野家の日本酒のある日常

——ご自宅では、日本酒をよく飲まれるんですか?
「冷蔵庫の8割、日本酒なんですよ(笑)主人が大好きで、常に何本もストックしてあるんです。中には、すごく手に入りにくいお酒もあって……」
——それって、たとえば?
「『而今(じこん)』ってお酒があるんですけど、それがね、三重のある酒屋さんでしか買えないんですよ。しかも、“いくら以上買ったらスタンプを1個”っていうルールで……それを家族みんなで集めて(笑)。叔父や母も協力してくれて、ようやく手に入りました!」
まさに“総力戦”。一杯のために家族が一致団結するなんて、ちょっと素敵な話だ。
「だから『而今』を開けるときは、ちょっと特別な気持ちになりますよね。いま冷蔵庫にも入ってます」
——やっぱり、ご自宅で飲む機会が多いんですか?
「そうですね。うちはよく“お魚と日本酒パーティー”をやってるんです。伊勢志摩のお魚を取り寄せて、伊勢マグロとかアワビ、岩ガキとかを並べて。脂がのってるものには、スッキリ系の日本酒を合わせるのが好きなんです」
食材に合わせてお酒を選ぶ。まるでレストランのような、いや、それ以上に贅沢な食卓が広がっていそうだ。
——日本酒で、ご家族や友人との時間を豊かになっているんですね。
「ほんと、そうだと思います。うちにとって日本酒は、ただ飲むものじゃなくて、人とのつながりを深めてくれる存在なんですよね」
ネコさんと日本酒”という、忘れられない日本酒の入り口

——日本酒との出会いって、覚えてますか?
「はい、はっきり覚えてます。たしか15年くらい前、斎藤ネコさんとご一緒した食事の席で、“飲み比べ”をさせてもらったんです。それが最初ですね」
その場で出された何種類かの日本酒。それぞれの香りや味わいを比べながら、ひと口、またひと口と飲んでいるうちに、「あ、好きかも」と思ったのだとか。
——そこから、一気に日本酒の世界にハマったんですね。
「そうですね。それ以来、いろんな出会いが日本酒を通じて広がっていきました。たとえば作曲家のかの香織さん。私のデビュー曲『アムリタ』を書いてくださった方なんですけど、その方が蔵元さんもされていて。コンサートのときに、オリジナルラベルの日本酒を作って、関係者の方に配ったこともありました」
さらには、あのCLAMP先生とも日本酒トークがあったという。
「『ツバサ・クロニクル』でご一緒したCLAMP先生が、“No.6”という日本酒を出してくださったこともあって。『手に入ったんだよ〜!』って(笑)。あれもなかなか手に入らないお酒なので、すごく印象に残ってます」
——音楽のお仕事と日本酒が、思わぬ形で重なっていったんですね。
「はい、不思議と縁があるみたいです。気づけば、大切な人たちとの思い出に、日本酒が寄り添ってることが多くて……音楽と日本酒、どこか似てるのかもしれませんね」
静かに、でも確かに心をほぐしてくれるもの。牧野さんにとって、日本酒は“つながりをつくる音”のような存在なのかもしれない。
“この名前、どこかで聞いたような……?”

——最近、印象に残っている日本酒ってありますか?
「実は、うちの娘と同じ名前の日本酒を見つけたんです。」
ラベルを見た瞬間、これはもう“買うしかない”と思ったそう。偶然の出会いが、新しい一本との縁をつくってくれた。
「今はその日本酒を冷蔵庫に入れてます。味ももちろん美味しかったんですけど、それ以上に、名前だけでちょっと特別な気持ちになりますよね」
——そういう出会いって、ちょっと嬉しくなりますよね。
「ほんとに。日本酒って、味はもちろんなんですけど、名前とかラベルに惹かれることも多いんです。“この銘柄かわいいな”とか、“なんだか気になる”とか。もう、“推し酒”みたいな感覚に近いのかもしれませんね(笑)」
お気に入りの一本には、理由なんていらない。
それが“娘と同じ名前”だったら、そりゃあもう、冷蔵庫の特等席は確定だ。
“池袋って、青春のにおいがするんです”

——今回のイベントは池袋で開催されますが、この街には思い出があったりしますか?
「もう、池袋は“青春”の場所ですね。高校から東京音楽大学に通っていて、ずっとこのあたりに通ってたんです。授業のあとにヤマハに寄って楽譜を探したり、『屯ちん』とか『無敵家』でラーメン食べたり。あの頃のこと、今でもよく覚えてます」
学生時代の足跡がそこかしこに残る街に、日本酒イベントとして戻ってくる——そのことに、牧野さんはとても感慨深げだった。
「南池袋公園も、すごく通ってました。ほんとに、“庭”って呼んでもいいくらい(笑)」
——今でも池袋には行かれるんですか?
「行きますよ。高校・大学の友達と“おいしいものとお酒を楽しむ会”を月イチくらいでやってて。みんな子育て中だったりするんですけど、スケジュールを合わせて少しだけ“自分に戻る時間”をつくるようにしてるんです」
——その時も、日本酒があったり?
「ありますあります(笑)。焼き鳥屋さんとか、お魚がおいしいお店とか、そういうところを選ぶと自然と日本酒が置いてあるんですよね」
仕事に、家庭に、子育てに。たくさんの役割を持ちながらも、牧野さんの中に流れる“自分のための時間”には、ちゃんとお酒が寄り添っている。
そして、かつて青春を過ごした池袋で、今度は“声”と“日本酒”を届ける側として立つ。
——そんな池袋で開催される『超吟醸祭』、どんな気持ちですか?
「うれしいです。あの頃の自分が通っていた場所に、今の私が戻ってこられるなんて。新しい出会いも、懐かしい思い出も、全部まるごと味わえる気がしてます」
池袋は、彼女にとって単なる地名ではなく、味や匂いまで染みついた“原点の街”だった。
“きっとまた、新しい『推し酒』に出会える気がしてます”

——実際に、日本酒をいくつか試飲されてみて、いかがでしたか?
「少しだけ飲ませていただいたんですけど、どれも本当に個性があって……“あ、これいいかも”って思えるお酒に出会えました」
イベント当日、会場には全国の酒蔵が集結する。普段はなかなか出会えない銘柄や季節限定のお酒たちに、牧野さんも胸を躍らせている様子だった。
「このイベントをきっかけに、また新しい“推し酒”が見つかったら嬉しいですね」
——“推し酒”って、言い得て妙ですね。
「ラベルのデザインだったり、名前だったり、味のタイプだったり。自分の好みにぴたっとハマる一本に出会えたときって、なんだか運命を感じちゃうんですよね(笑)」
お酒との出会いは、一期一会。
それはまるで、舞台の上で出会う一曲や、一人の登場人物のように、そのときの自分に寄り添ってくれる。
——今回の超吟醸祭、どんな方に来てほしいですか?
「詳しくなくても全然大丈夫。むしろ、“なんとなく気になる”くらいの方にこそ来てほしいですね。きっと、ふとした一本との出会いが、すごくいい思い出になると思います」
“お酒を飲む時間”が、“誰かと過ごす時間”に変わる瞬間。
牧野由依さんのまなざしの先には、そんなやさしい未来が見えていた。
イベント情報
・イベント名:超吟醸祭 powered by SIPORY
・開催日:2025年10月18日(土)・19日(日)
・会場:中池袋公園(東京都豊島区)
・牧野由依さん出演回:10月18日(土)第1部(11:00~13:00)
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(取材・写真:渡辺 和希 文:蒼井 しぽり)
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